留学体験記

Northwestern University Chicagoに留学中の若泉謙太から
留学体験記が届きました

若泉 謙太
Shirley Ryan AbilityLab, Chicago, IL, USA
Department of Physical Medicine and Rehabilitation, Feinberg School of Medicine,
Northwestern University, Chicago, IL, USA

成田空港から約12時間、アメリカ合衆国北中部に位置するオヘア国際空港に到着する。空港の喧騒を抜け、ダウンタウンへとハイウェイを走ると、広大な平地に突如として高層ビル群が現れる。その先に見える水平線は、アメリカとカナダの国境に連なる五大湖の一つであるミシガン湖の大きさを物語っていた。ノースウェスタン大学の医学部は、そんなアメリカ第三の都市、シカゴの中心地に位置している。その一角にそびえる、オレンジ色の暖色でコーディネートされた全面ガラス張りの26階建てのビルディングが、留学先のShirley Ryan AbilityLab (SRALab)だ。SRALabは大学関連のリハビリ専門病院で、臨床と研究の融合による高品質の医療の提供を目指している。慢性痛に関するブレイン・イメージング研究を行っているDr. Balikiは私をラボの最初のポスドクとして採用してくれた。

ブレイン・イメージングへの挑戦

私の博士課程での研究は、慢性痛モデルマウスに対して薬理遺伝学的手法を使った動物実験であったが、臨床医として将来的に質の高い研究と臨床を両立させるため、研究テーマを動物からヒトへと変更した。とはいえ、日本ではまだ慢性痛のイメージング研究が盛んではなく、適切な指導者を見つけるのは困難であった。世界的にも画像研究の多くが生理学的内容であるのに対し、Dr. Balikiはより臨床的な応用を視野に入れており、その点でも私のニーズに合致していた。

ファースト・ポスドク

言うまでもなく、ラボを維持・運営していくためには研究資金が必要であるが、新設されたラボのPrincipal Investigator (PI)は、数年のうちにその資金を獲得する必要がある。したがって、ラボメンバーは一丸となって、それに見合う業績を積み上げていく必要があった。ラボの規模も小さいことから、最初のポスドクとしての使命は重要であり、かつ、多岐にわたった。データ収集・解析、論文執筆にとどまらず、多数のカンファレンスでの研究発表、および共同研究者とのミーティングの調整などを精力的に行った。忙しい反面、複数のプロジェクトの中で何を優先的に処理するかをPIと話し合い、全体を通してラボの運営に触れることができた機会は貴重であった。

二人の指導者

Dr. Apkarian はDr. Balikiの元の指導者であり、ノースウェスタン大学内のDr. Apkarianのラボは立地にして3ブロック離れているだけだった。継続中の共同研究もあるため、Apkarianラボのミーティングや抄読会にも頻繁に参加した。ブラジル、ポルトガル、アルゼンチン、中国、レバノン、カナダ、アルメニアなど、国際的で異なるスキルを持った人材が集う空間は、常に多角的なアイデアと活発な意見が飛び交っていた。特に有意義だったのはDr. ApkarianとDr. Balikiのレベルの高い議論を間近で聞くことができる環境であった。新規の解析手法や研究提案に関して、常にインスピレーションを掻き立てられた。

家族と過ごす留学生活

日本で臨床医としての多忙な生活を送る中で、留学のような特別な機会がなければ、小学生の子供達と伸び伸びと過ごす時間を得ることは難しかったであろう。ブレインサイエンスの研究者としては、小児の脳の発達というのは非常に興味深いものである。特に、モチベーションを司る報酬系と理性的で社会性のある行動を司る皮質系の発達は、今後の複雑な社会で子どもたちの持続的な成長を支えるのに必要不可欠である。現地で英語と国際的な文化を学びながら、家族の関わり合いを増やすことができたのは、留学のもたらす大きな価値であったと思う。

このような機会を与えてくれた森崎教授、私を快く受け入れていただいたDr. Baliki, Dr. Apkarianに改めてお礼を申し上げたい。

ラボのホームパーティにて。一番左が筆者(若泉)、右から2番目がDr. Baliki(ボス)。

勤務先のリハビリ病院(SRALab)の看板の前にて。

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