RRD2022
2022年Research Residents Day(RRD)の報告
開催日:2022年12月10日
開催場所:慶應義塾大学 信濃町キャンパス 東校舎講堂
麻酔学教室では年に1回、若手教室員による研究発表の場として、リサーチ・レジデント・デーという催しがあります。去年に引き続き、今年も現地+オンラインのハイブリッド形式で開催され、大学院生を中心とした6名の発表があり、大いに盛り上がりました。大学院留学生の張先生と魯先生はそれぞれ、「術後痛モデルにおける中枢神経系の感作に関する研究」および「神経障害性疼痛モデルにおける低酸素負荷の影響」を英語で発表しました。来年から大学院に進学する河手先生は「慢性痛の脳画像研究」、大学院生の柿沼先生と神藤先生はそれぞれ、「急性腎障害の予測因子の研究」と「オフセット鎮痛の研究」について発表しました。さらに、基礎研究チームの加藤先生、ペインチームの若泉先生には現在進行中の研究プロジェクトについてご紹介いただきました。また、特別企画として産科麻酔がご専門の大橋先生に、産科麻酔の全貌についてご紹介をいただき、大変勉強になりました。
この会が素晴らしい点は、決して完成形の研究発表を求めていないところで、まだ草案段階にあるものだったり、試行錯誤の様子だったりと、研究現場の様子を垣間見ることができます。発表者にとっても敷居の低いものですし、聴衆にとっても研究生活をイメージしやすいものとなっており、非常に有意義な会だと思います。発表者の皆さんはそれぞれ医局員の先輩方の忌憚のない意見を持ち帰り、さらに自身の研究をよりよいものにしていることでしょう。
私は専門医を取得した後、さらなる研鑽を求めて大学院へ進学し、2023年1月現在、大学院3年目として、慶應義塾大学医学部解剖学教室の久保田義顕先生の研究室で勉強しております。ここは血管について研究している研究室で、我々の体の中に張り巡らされる血管の形成される過程を主に遺伝子改変マウスを用いて、形態学的に血管の様子を可視化し、分子生物学的に観察した現象の説明をすることでこれまで血管発生に関する様々な重要な知見を得てきました。
私の取り組んでいるのは末梢神経再生の研究です。末梢神経が損傷を受けた後の再生の過程を共焦点レーザー顕微鏡による免疫染色で観察して、そこでは血管が重要な役割を果たしていることが示唆されました。現在は、血管から分泌される神経再生を促すような新規の液性因子を検索しています。長期的な野望としては、末梢神経損傷で苦しむ患者さんに新たな治療を提供できれば、と臨床応用に繋がるような研究になるように日々頑張っています。
それぞれの研究がどの程度飛躍する1年となるのか、次回のリサーチ・レジデント・デーが楽しみです。
博士課程3年 藤田 治人
マウス室ではたくさんの種類の遺伝子改変マウスを維持、繁殖させています。
神経損傷後の再生の様子。左HE染色。右免疫染色。